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【労働法改正】勤務間インターバル制度の要点 5選

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【労働法改正】勤務間インターバル制度の要点 5選

要点
勤務間インターバル

「終業→次の始業までの休息」を確保する制度で、ブラック企業の連勤・短睡眠を止める実務ルールです。


要点
最新動向

一般企業は努力義務のままでも、運送業は2024年から原則11時間(最低9時間)の休息確保が実質ルール化され、義務化へ流れは確定しています。


要点
導入率

日本全体の導入はまだ少数派で、特に中小企業ほど遅れているのが現実です。


要点
効果

休息が確保されるほど睡眠不足・慢性疲労・ミスや事故のリスクは下がり、定着率や働きやすさは上がります。


要点
実装手順

導入は「実態把握→インターバル時間決定→規程化+勤怠システム整備→周知」で決まり、助成金で初期コストは圧縮できます。


タップできる目次

勤務時間インターバル制度とは

ここでは勤務時間インターバル制度について、下記の内容で触れます。

終業から次の始業まで一定時間の休息を保障する制度

勤務間インターバル制度とは、従業員がある日の勤務終了後から翌日の勤務開始までに一定時間以上の休息を取れるよう保障する仕組みですbiz.moneyforward.com

カワサキ

簡単に言えば、「仕事と仕事の間に必ず〇時間以上あけなければならない」というルールを職場に設けるものです。

従業員に十分な休息を与えることで、睡眠時間やプライベートの時間を確保し、過度な長時間労働による心身の負担を軽減することが目的です。

厚生労働省もこの制度を「長時間労働の是正と健康確保のための有効な取り組み」と位置づけて推奨しており、睡眠不足や疲労蓄積の抑制に寄与するとしています。

日本では2019年の法改正により企業の「努力義務」(努力目標)となりましたが、現時点では法的強制力はなく、企業が自主的に導入に取り組む段階です。

一方、EU諸国では既に勤務間インターバルは法定化されており、EUの労働時間指令では11時間以上の連続休息を義務付けています。

カワサキ

こうした国際基準との整合性も踏まえ、日本でも制度導入が進められているのです。

休息なしの連勤が生む疲弊

私は20代から30代にかけて複数のブラック企業で働いた経験があります。

カワサキ

そこでは勤務間インターバルなど存在せず、終電近くまで残業した翌朝に早朝出勤といった生活が当たり前でした。

実際、180日連続勤務という違法な長時間労働を強いられたこともあり、そのときは心身ともに限界で退職に踏み切りました。

カワサキ

明け方まで社長に付き合わされて飲酒し、ほとんど寝ずに出社して案の定倒れてしまった際には、飲みに強制同行させた張本人の社長から「俺に恥をかかせるな」と怒鳴られたこともあります。

こうした休息ゼロの働き方が続くと、慢性的な睡眠不足で思考力も低下し、同僚も私も疲弊しきっていました

新人社員がわずか数日、ひどい場合は初日で辞めてしまうことも珍しくなく、まともな人ほどすぐ辞めると揶揄される職場環境でした。

カワサキ

身をもって「人間、休息時間が確保されない働き方は長続きしない」という現実を痛感しました。

このような極端なケースでなくとも、仕事と仕事の間に適切なインターバルがない職場では誰しも心身に不調をきたしやすくなるものです。

カワサキ

だからこそ、勤務間インターバル制度のように労働者に一定の休息を保障する仕組みが重要だと強く感じています。

最新の労働法改正:勤務間インターバル制度の位置づけと義務化の動向

ここでは勤務間インターバル制度の位置づけと義務化の最新動向について、下記の内容で触れます。

2019年改正で勤務間インターバル制度が努力義務化

日本に勤務間インターバル制度の考え方が本格的に取り入れられたのは、2018年の働き方改革関連法成立による法改正がきっかけですjil.go.jp

この中で2019年4月より、事業主は勤務間インターバル制度の導入に努めることが法律上の責務(努力義務)と定められましたbiz.moneyforward.com

カワサキ

つまり法律上は「必ず導入しなければならない」わけではないものの、政府として企業に対し過労死防止策の一環として積極的な導入を促す姿勢を示した形ですjil.go.jp

実際、この制度は「過労死等防止対策白書」など政府の指針にも盛り込まれ、過労死ゼロを目指すための数値目標を伴う施策の一つに位置づけられましたjil.go.jp

法案審議の際には「次の法改正時には義務化を目指す」との国会附帯決議もなされておりjil.go.jp、将来的な強制力を持つ制度化への布石も打たれていたのです。

要するに、2019年時点では努力義務としてスタートし、まずは各企業が自主的に制度導入にチャレンジして実績を積む段階だと言えます。

カワサキ

しかし、この「努力義務」止まりで強制ではない状況が、その後の普及の緩慢さにも影響している面があるでしょう。

2024年の改正動向:運送業への適用と将来的な義務化検討

直近では、2024年の労働法改正や関連通達において勤務間インターバル制度に関する新たな動きが見られました。

カワサキ

特に大きいのは、自動車運転者(トラックやバス運転手など)への勤務間インターバル導入です。

2024年4月施行の厚生労働省「改善基準告示」の改正により、運送業のドライバーについては「勤務終了後、原則11時間以上(少なくとも9時間以上)は休息を取らせる」ことが明確に規定されましたbiz.moneyforward.com

従来は8時間程度空ければよいとされていた業界基準が引き上げられ、事実上ドライバー職には勤務間インターバルが義務化された形です。

この背景には、いわゆる「2024年問題」と呼ばれる運送業界の働き方改革(時間外労働の上限規制強化など)の文脈で、ドライバーの労働環境改善が急務となったことがあります。

カワサキ

加えて、医師や看護師など長時間勤務が常態化していた職種でも、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル確保(例:当直明けは○時間以上休む等)の議論が進み、段階的に実施され始めていますservices.randstad.co.jp

こうした特定業種での取り組みを皮切りに、勤務間インターバルの一般企業への義務化も現実味を帯びています。

実際、厚生労働省の有識者検討会(労働基準関係法制研究会)では次回の法改正時に11時間インターバルの義務化を視野に入れる方向で報告がまとめられましたnli-research.co.jp

政府方針としては、2025年~2026年の通常国会に関連法案を提出し、2026年または2027年度以降に段階施行する見通しが示されていますtaxlabor.comtaxlabor.com

改正内容の一つとして「勤務間インターバル:原則11時間の休息確保を義務化」が掲げられておりtaxlabor.com、これが実現すれば約40年ぶりの労基法大改正の目玉の一つになるでしょう。

ただし、義務化にあたっては中小企業への配慮や罰則の有無など詰めるべき論点も多く、現時点(2025年末)では最終決定はこれからですtaxlabor.com

カワサキ

いずれにせよ流れとしては、努力義務から法的義務へと勤務間インターバル制度が強化される方向に舵が切られていることは間違いありません。

勤務間インターバル制度の導入状況:普及率と中小企業の課題

ここでは勤務間インターバル制度の導入状況:普及率と中小企業の課題について、下記の内容で触れます。

導入企業は全体の5%台に低迷、中小企業ほど導入が遅れる

上のグラフは日本企業における勤務間インターバル制度の導入率の推移企業規模別の導入状況を示したものですnli-research.co.jp

全体の導入率を見ると、2019年に制度が努力義務化された直後こそ3.7%に達しましたが、その後は緩やかな伸びにとどまり、2024年時点でも5.7%程度に低迷していますnli-research.co.jp

政府は「2028年までに導入企業を15%以上に」というKPI目標を掲げていますが、現状は目標未達で普及が進んでいないのが実情ですnli-research.co.jp

カワサキ

特に中小企業での導入率の低さが顕著で、従業員規模が小さいほど導入率が低い傾向が見られます。

従業員1,000人を超える大企業では導入率16%前後まで上昇していますが、30~99人規模の企業ではわずか5%未満にとどまり、裾野には広がっていませんnli-research.co.jp

実際「勤務間インターバル制度を導入している企業のほとんどは一部の優良大企業であり、人手不足が深刻な多くの中小企業には導入する余裕がない」という指摘もありますservices.randstad.co.jp

カワサキ

このように企業規模による温度差が大きく、制度の恩恵が行き渡っていない現状があります。

導入しない理由:制度不要論から認知不足まで

では、なぜこれほど多くの企業で勤務間インターバル制度が導入されていないのでしょうか。

その理由について、厚労省の調査結果や企業側の声を見てみると、大きく二つの傾向が浮かび上がります。

一つは「当社では残業も少なく必要性を感じない」という制度不要論、もう一つは「制度自体を知らなかった」という認知不足ですnli-research.co.jp

カワサキ

実際、2022年の就労条件総合調査では「超過勤務の機会が少ないため導入の必要を感じない」企業が57.6%と半数以上を占め、次いで「制度を知らなかった」企業が18.7%に上りましたnli-research.co.jp

2024年の調査でも、「不要」が約58%、「知らなかった」が約19%とほぼ同様の傾向が続いています(残りは「常時顧客対応が必要」「人員不足」「時間管理が煩雑になるから」等の理由が各約数%ずつ)nli-research.co.jp

つまり「うちは長時間労働なんてしていないから休息ルールはいらない」という認識と、制度の存在自体を知らないケースが多いわけです。

前者に関しては、本当に残業ゼロのホワイト企業も一部にはあるでしょうが、「問題が顕在化していないだけで実際は社員に無理をさせている」ケースや、単に経営層が労働時間の実態を把握できていない可能性も否めません。

一方で後者の認知不足については、制度の周知徹底が行政から十分になされてこなかった面もあります。

特に中小企業では人事労務の専門知識が社内に乏しく、新しい制度情報のキャッチアップが遅れがちです。

また、最近ではリモートワーク等で仕事とプライベートの境界が曖昧になり、勤務終了時刻が見えにくいことから「インターバルをどう適用していいかわからない」という戸惑いもあるようですnli-research.co.jp

カワサキ

こうした多様な理由が絡み合い、導入しない企業が全体の8割近くを占めているのが現状なのですservices.randstad.co.jp

政府の普及目標と支援策:助成金やコンサルで中小を後押し

勤務間インターバル制度の普及促進に向けて、政府も手をこまねいているわけではありません。

上述のように2028年までに導入企業15%以上という数値目標(KPI)を掲げnli-research.co.jp、それを達成すべく様々な支援策を展開しています。

厚生労働省は専用のポータルサイト等で業種別の導入マニュアル作成優良事例の紹介、企業向け無料コンサルティングの提供など、情報提供や啓発活動を積極的に行っていますnli-research.co.jp

カワサキ

たとえば業種ごとに「どのようにインターバルを運用すれば業務に支障が出にくいか」といったノウハウをまとめた冊子を配布したり、実際に導入している企業の成功例(インターバル導入で残業が減り離職率が改善した等)を紹介したりしています。

また、人的・時間的リソースが限られる中小企業向けには、社会保険労務士など専門家による個別相談・コンサルティングを無料で受けられる窓口も設置されていますnli-research.co.jp

さらに、金銭面での支援として用意されているのが「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」ですnli-research.co.jpbiz.moneyforward.com

これは中小企業が新たに勤務間インターバル制度を導入したり、既存のインターバル時間を延長したりする際に、就業規則の改定や勤怠システムの導入・変更にかかる費用の一部を国が助成する制度です。

具体的には、インターバルを9時間以上に設定すれば助成対象となり、11時間以上にすれば助成額上限が引き上げられる仕組みになっていますbiz.moneyforward.com

カワサキ

この助成金を活用すれば、制度導入に伴う初期コスト(システム改修費用や従業員研修費など)の負担を軽減できますbiz.moneyforward.com

加えて、勤務間インターバル導入は「ホワイト企業認定」や「健康経営優良法人認定」などの取得においてもプラス評価となる場合がありbiz.moneyforward.com、企業イメージ向上や採用力強化にもつながるとされています。

もっとも、これら支援策の存在自体を知らない企業もまだ多く、宝の持ち腐れになっている面もあります。

カワサキ

政府としては引き続き周知・啓発に努め、特に中小企業での認知度と導入率を底上げすることが今後の課題と言えるでしょうnli-research.co.jp

勤務間インターバル制度の効果:健康・離職率へのインパクト

ここでは勤務間インターバル制度の効果:健康・離職率へのインパクトについて、下記の内容で触れます。

長時間労働による健康被害・過労死リスクを減らす効果

勤務間インターバル制度最大の目的は、労働者の健康を守ることにあります。

十分なインターバル(休息時間)を確保することで、睡眠不足や慢性疲労を防ぎ、過労による健康被害リスクを低減できますbiz.moneyforward.com

厚生労働省も制度導入により「睡眠不足や疲労蓄積の抑制に寄与する」と明言しておりbiz.moneyforward.com、これは裏を返せば、現状では多くの労働者が休息不足による健康リスクに晒されているということです。

実際に、勤務間インターバルが極端に短い勤務形態(夜遅くまで働いて翌朝早く出勤、いわゆる「短いターンアラウンド勤務」)が常態化すると、睡眠障害や極度の疲労を引き起こしやすくなることが研究でも示されています。

例えばノルウェーで看護師1,200人以上を1年間追跡した研究では、勤務間隔が11時間未満の「短い勤務交代」を多く経験した人ほど、1年後に睡眠障害(シフトワーク障害)や慢性疲労のリスクが有意に高まったと報告されていますpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov

別の韓国の大規模研究でも、夜勤労働者3万3千人超のデータを分析した結果、勤務間隔が短いと不眠症の発症リスクが約1.2倍に増加し、疲労による病欠日数も増えることが確認されましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov

カワサキ

これらのエビデンスは、十分な休息時間の確保が労働者の心身の健康維持に直結することを示唆しています。

実際問題として、過労による重大な健康被害(脳・心臓疾患やうつ病など)は長時間労働睡眠不足と強い相関があります。

勤務間インターバル制度は、その根本原因である休息不足を構造的に防ぐことで、過労死や健康障害の発生を水際で食い止める効果が期待されます。

カワサキ

政府が本制度を「過労死ゼロを目指す切り札の一つ」と位置づけているのもそのためですjil.go.jp

もっとも、休息時間を形式的に確保しても、通勤時間や家事・育児負担が大きければ実際の睡眠時間は十分取れない可能性がありますjil.go.jp

また、インターバル中に会社から電話やメールで呼び出されたり、持ち帰り残業をしてしまったりすれば、せっかくの休息も台無しですjil.go.jp

カワサキ

したがって、制度を導入するだけでなく「勤務時間外は仕事から完全に解放する」という職場風土づくりまで含めて取り組むことで、初めて健康確保の効果が十分に発揮されると言えます。

ワークライフバランス改善で離職率低下・エンゲージメント向上も期待

勤務間インターバル制度には健康面だけでなく、職場定着率の向上という効果も期待できます。

カワサキ

企業が従業員の休息をしっかり保障する職場環境は、従業員から見れば「大切にされている」という安心感につながります。

実際、休息時間への配慮が行き届いた職場では従業員満足度やエンゲージメント(仕事への愛着心)が高まり、結果として離職率の低下や人材の定着に貢献することが指摘されていますbiz.moneyforward.com

厚労省の発表資料でも、インターバル導入企業では「労働者のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が確保され、働き続けやすくなる」との効果が報告されていますjil.go.jp

カワサキ

私自身の経験から言っても、休む間もなく酷使される職場より、メリハリを持って働ける職場の方が「この会社で頑張りたい」と思えるものです。

前述のブラック企業では新人が次々に辞めていきましたが、逆にきちんと休める職場であれば優秀な人材ほど長く残ってくれるでしょう。

実際、勤務間インターバル制度は人手不足が深刻な介護・医療・運輸・飲食業界などでは「休息が確保されている職場であること」を対外的に示すアピールポイントにもなっており、採用活動や従業員定着の差別化要因として注目されていますbiz.moneyforward.com

一方で留意すべきは、「勤務間インターバル=労働時間の厳格制限」であるため、場合によっては働き方の自由度が下がると感じる従業員もいるかもしれないという点ですbiz.moneyforward.com

カワサキ

たとえば、ダブルワーク(副業)で夜間に別の仕事をしたい人や、歩合制でもっと稼ぎたいから長く働きたいと望む人にとっては、一律の休息規制がもどかしく映る可能性もありますnli-research.co.jp

また、慢性的な人手不足の職場では「休ませたいけど休ませると回らない」というジレンマもあるでしょうnli-research.co.jp

カワサキ

こうした事情から、制度運用には一定の柔軟さも必要です。

実際、労働政策研究機構の報告書でも「労働者の事情(家庭の事情や本人の希望など)を勘案した柔軟な対応が求められる」という指摘がなされていますnli-research.co.jp

カワサキ

ただし、柔軟さを履き違えて制度を骨抜きにしてしまっては本末転倒です。

企業側が都合の良い解釈で「本人が望むなら」と過剰労働を黙認すれば、結局は従業員の健康を損ないエンゲージメントも下がってしまいますnli-research.co.jp

人的資本経営(従業員を資産と捉え長期的成長を図る経営)の観点からも、短期的な労働力の酷使より長期的な健康と生産性の両立を重視すべきでしょうnli-research.co.jp

カワサキ

その意味で、勤務間インターバル制度はワークライフバランスを改善し従業員が安心して働き続けられる環境を整えることで、結果的に企業の持続的成長にも資する取り組みと言えるのです。

集中力維持で生産性向上、ミス・事故の防止につながる

勤務間インターバル制度には業務の質を向上させる効果もあります。

カワサキ

人間はしっかり休息を取ることで初めて集中力判断力をフルに発揮できますが、逆に疲れ切った状態ではミスや判断ミスが増え、生産性も低下します。

十分なインターバルを設けて従業員がしっかり休めば、勤務中の集中力や注意力が保たれ、仕事の効率や正確さが向上することが期待できますbiz.moneyforward.com

反対に、短いインターバルで連日働かせれば、慢性的な疲労によってミスや事故のリスクが高まるのは明らかです。

カワサキ

実際、ある大手製造業では試験的に勤務間インターバル11時間を導入したところ、作業ミスの発生件数が年間で約3割減少したというデータも報告されています。

休息時間を十分に取らせることでヒューマンエラーが減り、安全性が高まった好例と言えるでしょう。

カワサキ

加えて、インターバル制度の導入に伴い「深夜までの残業ができなくなる」ため、業務の効率化業務量の見直しが進むという副次的効果もあります。

前述の製造業のケースでも、従業員が「遅くとも夜○時には帰れる」ことを前提に仕事の段取りを組むようになり、結果として不要な残業が減って定時退社が定着するという好循環が生まれたといいます。

このように、勤務間インターバル制度は一見「働ける時間を制約する」ネガティブなものに思えるかもしれませんが、適切に運用すればむしろ業務効率を高め、生産性向上につながるポジティブな取り組みなのです。

カワサキ

長時間労働が常態化している職場では「時間当たりの生産性」が落ちているケースも多く見られます。

休むべきときに休み、リフレッシュした頭で働く方が結果的にアウトプットの質も上がる——これは多くの実証研究や企業事例が裏付けるところですbiz.moneyforward.com

カワサキ

従って、企業にとって勤務間インターバル制度は労働者保護と生産性向上を両立しうるWin-Winの施策であり、決して「甘やかし」ではなく戦略的な働き方改革と言えるでしょう。

勤務間インターバル制度の導入方法と運用ポイント

ここでは勤務間インターバル制度の導入方法と運用ポイントについて、下記の内容で触れます。

勤務間インターバル制度を導入する基本ステップ

勤務間インターバル制度を自社に導入する際は、次のような基本的なステップを踏むとスムーズです。

STEP
現状の勤務実態を把握する

従業員の労働時間や残業の状況を調査し、特に休息不足になりがちな部署・シフトを洗い出します。現在どの程度の勤務間隔しか取れていないのかデータを確認し、課題を見極めます。

STEP
インターバル時間と適用範囲を設定する

何時間のインターバルを確保するか(最低○時間以上など)を決めます。【9時間以上】を一つの目安に、可能なら【11時間以上】の確保を目標にしましょう。また正社員だけでなく契約・派遣社員も含めるか、シフト制以外の部署にも適用するかなど、制度の適用対象や例外規定を明確に定めます。

STEP
就業規則の見直し・勤怠システムの整備

決定したインターバル時間を就業規則や社内規程に明文化します。例えば「終業から○時間以上空けて次の勤務を開始すること」と条文化し、違反時の扱い(原則出勤禁止等)も定めます。同時に、勤務シフトを組む際や残業申請時にインターバル時間をシステム上で自動チェック・調整できるよう、勤怠管理システムやシフト作成ツールをアップデートします。必要に応じて外部のITサービスやアウトソーシングも活用しましょう。

STEP
従業員への周知と説明・意見募集

制度導入前に社内説明会等を開き、勤務間インターバル制度の趣旨・ルールを全従業員に周知します。休息確保の大切さやメリットを丁寧に説明し、現場からの疑問や不安にも答えます。また従業員から意見や要望を聞く窓口を設け、制度に対する声を運用ルールに反映させることも大切です。

以上が基本的な導入手順ですが、自社の規模や業種に応じて調整しながら進めてください。

カワサキ

特にシフト制の職場では勤務パターンの組み替えが必要になる場合もあるため、現場の管理職と徹底的にシミュレーションすることをお勧めします。

制度を機能させるための実効的な運用ポイント

導入した勤務間インターバル制度を形骸化させず実効性のあるものにするには工夫が必要です。

カワサキ

以下に、制度を効果的に機能させるためのポイントを挙げます。

制度を機能させるための実効的な運用ポイント

  • 業務プロセスの見直し・効率化
  • 勤務スケジュールの適正管理(システム活用)
  • 管理職の意識改革と現場フォロー
  • 従業員への制度周知とフィードバック体制

業務プロセスの見直し・効率化

単に勤務時間を制限するだけではなく、まずは業務の進め方自体を見直すことが重要です。

無駄な会議や非効率な手順がないか洗い出し、可能なものはIT化やアウトソーシングも検討します。

カワサキ

長時間労働を前提としない業務体制」への転換が求められます。

業務量を調整しないままでは、インターバル確保のために他の従業員にしわ寄せがいったり、仕事が回らなくなったりする恐れがあります。

カワサキ

そうならないよう、業務そのものをスリム化・効率化する改革とセットで進めましょう。

勤務スケジュールの適正管理(システム活用)

シフト作成時や残業申請時にインターバル時間が確保されているか自動チェックする仕組みを導入します。

具体的には、勤怠管理システム上で「前回勤務終了から○時間未満のシフトは入力できない/アラートが出る」ように設定したり、人為的な入力ミスを防ぐルールを設けます。

また、人員配置に余裕を持たせ、誰かがインターバル未了の場合は代替要員でカバーできる体制を整えることも必要です。

カワサキ

特に中小企業では「休ませたいけど代わりがいない」を防ぐため、多能工化や他部署応援など融通の利く人員育成も検討しましょう。

管理職の意識改革と現場フォロー

制度を定着させるにはマネジメント層の理解と協力が不可欠です。

管理職向けに研修を行い、勤務間インターバル制度の趣旨(従業員の健康確保・過重労働の防止)をしっかり共有します。

併せて、日々の業務で部下の勤務状況に目を配り、無理な働き方をしていないかチェック・声かけできる管理体制を整備します。

カワサキ

例えば「今日は前日遅くまで頑張ってくれたから明日はゆっくり出社していいよ」といった柔軟な勤務調整を上司主導で行うなど、現場でのきめ細かなフォローが求められます。

従業員への制度周知とフィードバック体制

インターバル制度を導入した目的とメリットを全従業員に腑に落ちる形で理解してもらうことが大切です。

制度に対する不満や誤解が生じないよう、「なぜ休息が必要なのか」「どんな良い効果があるのか」を社内報や研修で繰り返し伝えましょう。

万一「働きにくくなった」といった声が出た場合には、現場の声を聞いて柔軟に運用ルールを調整する度量も必要です。

例えば急なトラブル対応時の例外措置を設ける、希望者には副業可能な範囲で調整するといった工夫も考えられます。

カワサキ

制度の目的(健康管理と働きやすさ向上)を全社で共有し、皆でより良い職場環境を作る取り組みとして進める姿勢が、制度を根付かせる鍵となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。最後に今回の記事の内容をまとめて締めたいと思います。

この記事のまとめ

  • 勤務間インターバル制度: 終業から次の始業までに休息時間を確保し、連勤と睡眠不足を減らす仕組みです。
  • 法的位置づけ: 2019年4月から努力義務が基本で、業種によっては運用が具体化しています。
  • 目安時間: まずは9時間、できれば11時間を確保する設計が現実的です。
  • 期待できる効果: 睡眠不足・慢性疲労のリスクを下げ、ワーク・ライフ・バランスや業務パフォーマンスの維持に繋がります。
  • 導入の現実: 導入率はまだ高くなく、特に中小企業で遅れがちです。
  • 導入の手順: 実態把握→ルール化(就業規則)→勤怠システム整備→周知の順で進めると崩れにくいです。
  • 運用のコツ: 例外を乱発しないことが重要です。勤務時間外の連絡や持ち帰り作業も含めて「休息」を守る設計が効きます。
  • 助成金: 中小企業は導入・延長で助成金が使える場合があります。要件は年度で変わるので最新要項を確認します。
  • 個人の守り方: インターバルが極端に短い日が続くなら、勤怠・シフト・連絡ログを残し、相談先に繋げる準備をします。

長時間労働が続く職場ほど、制度は「理想論」ではなく「命綱」になり得ます。

休めない働き方が当たり前になっているなら、まずは自分の勤務間隔を記録し、次の一手(調整提案・相談・転職・退職)を具体化してください。

カワサキ

今回の記事は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

よくある質問

勤務間インターバル制度は2025年12月時点で義務ですか?

勤務間インターバル制度は2025年12月時点で原則「努力義務」で、未導入だけで直ちに罰則が付く義務ではありません。 ただし2019年4月1日から、事業主は終業から始業までの時間設定などで健康確保に努める位置づけです。終業・始業が連日詰まる職場ほどリスクが高いので、就業規則と勤怠ルールに落とし込み、始業前の作業や呼び出しも含めた扱いを明文化するのが現実的です。現場が回らないと言われたら、まず勤務記録を保存し、メールで「翌日始業の調整」を具体提案すると動きやすいです。

勤務間インターバル制度の目安時間は9時間と11時間のどちらですか?

目安は「まず9時間、できれば11時間」です。 9時間以上11時間未満/11時間以上は国の助成金でも区分され、11時間はEUで日ごとの連続休息として示される基準です。例えば終業22時→始業9時なら11時間ですが、通勤往復2時間と身支度で実質休息は減ります。終業が深夜0時なら9時間でも睡眠が5〜6時間に落ちやすいので、睡眠重視なら11時間寄りが無難です。まずはクイックリターンが連発する日を潰すだけでも体感が変わります。 厚生労働省

勤務間インターバル制度は自動車運転者で9時間・11時間ルールが義務ですか?

自動車運転者は、改善基準告示で「休息期間は原則11時間、少なくとも9時間を下回らない」運用が示されています(2024年4月改正)。 対象はトラック、バス、タクシーなどで、配車・待機・荷待ちで休息が溶けやすいのが現実です。9時間未満に落ちる見込みがある運行計画なら、現場で頑張る前に計画側を組み直す発想が必要です。実務では、休息不足が出そうな時点でアラートが鳴る仕組みを入れると事故の芽を摘みやすいです。 長時間労働改善ポータル

勤務間インターバル制度の導入率はどれくらいで、未導入企業が多いのはなぜですか?

勤務間インターバル制度の導入は、まだ少数派です。 厚労省の就労条件総合調査では導入済み5.7%、検討中15.6%、予定なし78.5%で、従業員1,000人以上は16.1%と規模で差があります。導入企業でも平均の確保時間は10時間40分、最も多い区分は7〜8時間です。だから未導入企業では、夜勤や繁忙部署だけを試行し、睡眠時間や残業の変化を数字で見せる提案が刺さります。導入率が低いほど「うちは無理」が常套句になりますが、まず1か月だけ試す提案なら通ることがあります。 厚生労働省

勤務間インターバルが短いと睡眠や健康にどんな影響がありますか?

勤務間インターバルが11時間未満の「クイックリターン」は、睡眠と健康リスクの指標として研究が多いです。 2014年ノルウェーの看護師1,224人追跡ではクイックリターンが多いほど交代勤務障害や病的疲労のリスクが上がり、翌年に減らすと疲労リスクが下がりました。2022年の多施設33,669人でも不眠のオッズ比1.21が報告されます。まず自分の1か月のクイックリターン回数を数えるだけでも、上司との会話が具体的になります。

勤務間インターバル制度は生産性やミス防止に効果がありますか?

勤務間インターバルを確保すると、睡眠時間の確保に一定の効果があり、心身の健康や業務パフォーマンスに関わる可能性が示されています。 ただし睡眠は、通勤、家事・育児・介護、勤務時間外の仕事連絡や持ち帰り作業でも削られます。私の体感でも寝不足の連勤は判断力が鈍ります。制度を入れるだけで満足せず、残業の締め時刻と連絡ルールをセットで変えるのがコツです。ヒヤリハットや手戻りが増えた時は、休息不足を疑う視点が役に立ちます。 日本産業労働財団

勤務間インターバル制度を会社が導入するときの最短ステップは何ですか?

導入の近道は「守れなかったら自動で調整される仕組み」を先に作ることです。 実効性が出やすい方法として、始業の後ろ倒し、始業前の勤務禁止、一定時刻以降の残業禁止などが示されています。現場任せだと形だけになりやすいので、シフト作成・残業申請・勤怠締めでインターバル不足を検知し、翌日の始業を遅らせるか代替休息を付ける運用まで決めると定着します。例外は申請制にして濫用を防ぐのが安全です。管理職の研修もセットにするとぶれません。 日本産業労働財団

勤務間インターバル制度の助成金は何をすると対象になりやすいですか?

助成金を狙うなら、休息9時間以上11時間未満または11時間以上の勤務間インターバルを導入し、社内ルールとして定着させる取組が核になります。 主に中小企業向けで、計画を作って実施し、実績を報告する流れが基本です。勤怠システム改修、外部専門家支援、社内周知、業務手順の見直しに使えるので、導入コストが壁の職場ほど効果が出やすいです。年度で要件が変わるので、申請前に必ず要項を確認します。申請は締切があるので早めに動きます。 厚生労働省

テレワークや持ち帰り残業がある職場で勤務間インターバルを守るコツはありますか?

テレワークでも勤務間インターバルは「終業から次の始業まで」を守る発想は同じです。 ただし研究では、勤務時間外の仕事連絡や持ち帰り残業が睡眠時間を制約する要因になり得ると示唆されています。終業後のチャット通知を原則オフにし、緊急対応の定義を明文化し、崩れた日は翌日の始業を遅らせるなど、仕事から離れる時間を守るルールをセットにすると続きます。オンコールがある職場は代替休息の付け方まで決めます。家での二度寝や昼寝も、回復の手段として扱います。 日本産業労働財団

勤務間インターバル制度が守られないとき、労働者はどこに相談すればいいですか?

勤務間インターバルが守られないときは、長時間労働や割増賃金など「違反になり得る部分」を切り分けて相談するのが早いです。 厚労省の「労働条件相談ほっとライン」は平日夜間や土日祝も対応し、過重労働の特別相談日もあります。会社が口頭で丸め込みがちな場合は、勤怠、シフト表、メール、チャット、通話履歴などを残してから相談すると話が速いです。危険を感じたら最優先で身体を休めます。今日眠れないほど追い詰められているなら、相談を先送りしないほうが安全です。

勤務間インターバル制度の「終業・始業」は打刻時刻だけで計算していいですか?

打刻時刻だけでなく「実際に働いた時間」を基準に考えるのが安全です。 着替え・準備・清掃・手待ち・義務研修などが使用者の指揮命令下なら労働時間になり得るので、打刻前後の作業も含めて記録し、翌日の始業調整に繋げます。 厚生労働省

勤務間インターバル制度が就業規則に無い会社でも導入をお願いできますか?

就業規則に無くても、健康確保の観点で導入を提案できます。 国は勤務間インターバルを含む労働時間等の見直しを促しているので、まず「特定部署だけ試行」「9時間→11時間へ段階導入」など現場が飲める案を出すと通りやすいです。 厚生労働省

勤務間インターバル制度は夜勤や交代勤務でも意味がありますか?

交代勤務ほど効果が出やすいテーマです。 11時間以下の短い休息(クイックリターン)は睡眠や疲労などの急性の不調と関連しやすいとするシステマティックレビューがあり、まず「短い休息が連発する並び」を減らすのが第一手になります。 PubMed

勤務間インターバル制度の「例外」を作るなら何を決めるべきですか?

例外は「要件・回数・代替休息」をセットで決めるのがコツです。 例外が常態化すると制度が形骸化します。緊急対応の定義、事前承認、翌日の遅出や代替休息の付与まで決め、勤務時間外に仕事から離れる状態も守る設計にします。 日本産業労働財団

勤務間インターバル制度があるのに早朝出社や始業前作業を頼まれたらどうすればいいですか?

始業前作業が実質的に業務なら労働時間になり得ます。 「早く来てメール処理」「開店準備」などが黙示の指示で常態化していると、休息も賃金も削られます。指示は文章で残し、勤怠に反映される運用へ修正を求めます。 厚生労働省

勤務間インターバル確保のために「遅出」になった日の賃金トラブルを防ぐ方法はありますか?

賃金・評価・欠勤扱いのルールを先に明文化するのが最重要です。 運用が曖昧だと現場は揉めます。導入事例を参考に、遅出の扱い(賃金控除の有無、申請手順、例外時の代替休息)まで就業規則・運用フローに落とし込みます。 働き方・休み方改善ポータルサイト

勤務間インターバル制度と36協定や残業上限規制は同じ話ですか?

別の話で、両方を同時に守る必要があります。 インターバルは「勤務と勤務の間の休息」を確保する仕組みです。一方で残業の上限や割増賃金などは別の枠で動きます。休息を入れた結果、別ルール違反が隠れないよう勤怠を整えます。 厚生労働省

勤務間インターバル制度の導入方法を社内で説明する材料はどこで集められますか?

厚生労働省のポータルで導入事例や資料がまとまっていて使いやすいです。 業種や課題で事例検索ができ、社内説明用のリーフレット等も入手できます。社内の反発が強いほど「同業の事例」を見せると一気に進みます。 働き方・休み方改善ポータルサイト

勤務間インターバル制度の「効果」を会社で測るなら何を指標にすべきですか?

まずは「11時間以下の短い休息の回数」をKPIにするとブレません。 併せて睡眠不足(例:6時間未満の頻度)、疲労感、ミス・ヒヤリハット、欠勤や休職の推移を見ると改善が見えやすいです。短い休息は不調と関連しやすい知見が蓄積しています。 PubMed日本産業労働財団

勤務間インターバル制度が導入されると「サービス残業が増える」心配は現実的ですか?

運用が悪いと現実に起き得るので、先に潰すべき論点です。 「休息を確保するため打刻後に片付けて」などは、条件次第で労働時間になり得ます。客観記録(PCログ等)を基礎に勤怠へ反映する運用をセットで入れると、悪用を防げます。 厚生労働省

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主な引用元・参考文献

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この記事を書いた人

ブラック企業からホワイト企業へ
20代から30代までブラック企業で働き、180日連勤や暴言に耐え抜いた経験を持つ元会社員。筋トレを通じて心身を鍛え、ブラック企業を脱出。現在はホワイト企業で穏やかな生活を送っています。

筋トレで変わった人生
筋トレを始めた当初は、簡単な腕立て伏せからスタート。それが習慣化し、退職を決断する勇気を手に入れました。「筋トレして退職しろ。」では、自身の経験をもとに、読者が新たな一歩を踏み出せるようサポート中です。

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